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日本は資源大国へ進めるか? 南鳥島のレアアースがひらく新しい可能性

南鳥島沖の水深5,569メートルから、約50トンのレアアース泥が引き上げられました。JAMSTECなどが集めてきたデータから、中国に集中する供給の現状、採鉱と精製の課題、日本の海底資源が持つ可能性を読み解きます。

海面の調査船から水深5,569メートルの海底まで管が伸び、筆者が期待に満ちた表情で親指を立てている

2026年2月1日未明、日本最東端の南鳥島周辺で、海底の泥が地球深部探査船「ちきゅう」へ届きました。泥が通ってきた揚泥管の長さは5,569メートルです。

最近、こういったニュースで「レアアース」という言葉をよく見かけますよね。
でも、そもそも何なのか。なぜ中国への依存が話題になり、日本の海底で見つかると注目されるのか。この記事では、レアアースを初めて知る人にも分かるように、身近な用途からJAMSTECの調査、日本にひらかれる可能性までを解説します。

試験を行った内閣府の「SIP海洋」と海洋研究開発機構「JAMSTEC」などのチームは、3日間で約50トンの泥を回収しました。2026年7月24日に公表された分析では、回収泥に含まれたレアアース総量の約54%が、イットリウムやジスプロシウムなどの中重レアアースでした。

南鳥島のレアアースは、日本に新しい供給源をもたらす可能性を持っています。2013年から積み重ねられた調査をたどると、期待できることと、これから確かめる条件の両方が見えてきます。

東京周辺から南鳥島までの位置関係。南鳥島は東京から南東へ約1,950キロメートル離れた太平洋上にある
東京周辺から南鳥島までの位置関係を示した模式図です。南鳥島は、東京から南東へ約1,950キロメートル離れた日本最東端の島です。(JAMSTEC公表資料を基にDATA WORLD編集部作成
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南鳥島沖の海底で、一体何が起きたのか

JAMSTECが2026年7月24日に公表した試験結果には、今回の到達点を示す三つの数字があります。

確認された数字何を表しているか
5,569メートル採鉱機を海底へ下ろした揚泥管の長さを使った水深指標
約50トン海底の泥を海水と混ぜて吸い上げたあと、加えた海水の分を差し引いて計算した泥の重さ
約54%回収した泥から検出されたレアアース全体を100としたとき、中重レアアースが占めた割合
南鳥島沖の試験を示す三つの数字。水深5,569メートル、回収した泥約50トン、検出されたレアアースのうち中重レアアース約54%
5,569メートルは水深、約50トンは泥の推計重量、約54%は検出されたレアアースに占める中重レアアースの割合です。(JAMSTEC(2026)を基にDATA WORLD編集部作成

5,569メートルの海底で採鉱機が泥をほぐし、海水と混ぜた状態で船まで吸い上げます。石油や天然ガスの掘削技術を応用し、泥を閉じた管の中で循環させる仕組みです。海中へ広がる濁りを抑える目的もあります。

調査船から水深5,569メートルの海底まで閉じた管を下ろし、海底の泥を船上へ運ぶ採鉱システムのイメージ図
採鉱機が泥をほぐし、海水と混ぜ、閉じた管を通して船上へ運ぶ流れを示しています。装置形状と縮尺は説明用に単純化しています。(JAMSTEC公表資料を基にDATA WORLD編集部作成

現場では7メートル近い波に何度か遭遇し、採鉱機と揚泥管を下ろす作業は予定の7日間から12日間へ延びました。深海で装置が動くことに加え、遠い海域の天候に合わせて設置し、回収し、港へ戻れるか。非常にハードな調査であったことが物語られていますよね。

ここで、レアアースと中重レアアースの関係を整理します。レアアースは複数の元素をまとめた大きなグループで、中重レアアースはその中にある小さなグループです。

今回回収した泥は約50トンでした。その泥にレアアース全体が何キログラム含まれていたのかは公表されていません。分かったのは、検出されたレアアースの種類ごとの割合です。

少しややこしいですよね。レアアース全体の含有量を仮に100とすると、そのうち約54が中重レアアースだった、という意味です。泥50トンの54%が中重レアアースだった、という計算はできません。

注目したいのは、希少価値が高い中重レアアースが、検出されたレアアースの半分を超えていたことです。JAMSTECは、イットリウムやジスプロシウムなどを、電気自動車のモーター用磁石をはじめとする先端製品に欠かせない元素と説明しています。

一体、何が起きたのか。水深5,569メートルの海底から約50トンの泥を船まで運び、その泥から検出されたレアアースのうち約54%が中重レアアースだと確認されたのです。存在を調べる研究から、生産方法を試す研究へ。南鳥島の可能性が、5,569メートル、約50トン、約54%という三つの具体的な数字で示されたニュースでした。深海の研究が、ここまで来たのかと思う結果ですよね。

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レアアースは、身近な製品のどこで使われているのか

レアアースという名前は、性質の似た17種類の元素をまとめて指します。スカンジウム、イットリウムと、ランタンからルテチウムまでの元素です。「希土類」とも呼ばれます。

JOGMECの解説によると、この17元素は、原子の重さや化学的な性質をもとに、軽レアアース、中レアアース、重レアアースというグループに分けて扱われます。どこで区切るかは資料によって少し異なります。今回のJAMSTECの発表では、比較的重い元素をまとめて「中重レアアース」と呼び、イットリウム、ガドリニウム、ジスプロシウムなどを挙げています。

つまり、レアアースが17元素全体の名前で、中重レアアースはその内側にあるグループの名前です。前の章に出てきた約54%は、検出されたレアアースを種類別に分けたとき、中重レアアースのグループが占めた割合でした。

レアアース17元素と、今回の発表で個別表示された軽レアアースと中重レアアースの関係。検出されたレアアースの53.9%が中重レアアース
レアアースは17元素の総称です。今回の発表では、検出されたレアアースの53.9%を中重レアアースが占めました。分類範囲は資料によって異なります。(JAMSTEC(2026)を基にDATA WORLD編集部作成

なぜ中重レアアースが注目されるのでしょうか。ジスプロシウムやテルビウムなどには、高温でも強い磁力を保つ働きがあります。電気自動車のモーターをはじめとする先端製品で必要とされ、JAMSTECは希少価値の高い元素と説明しています。

多くの製品では、レアアースを大量に使うより、材料へ少量加えて性能を引き出します。強い磁力、熱への強さ、光を出す性質など、元素ごとに異なる働きがあります。

代表的な用途を挙げると、ニュースに出てくる元素と日常の製品がつながります。

元素グループ主な役割と用途
ネオジム軽レアアース強力な永久磁石。電気自動車やハイブリッド車のモーター、発電機など
ジスプロシウム中重レアアースネオジム磁石の耐熱性を高める。高温になるモーターなど
イットリウム中重レアアースレーザー、電子材料、蛍光体など
セリウム、ランタン軽レアアースガラス研磨剤、自動車の排ガス触媒など
ネオジム、ジスプロシウム、テルビウム、イットリウム、セリウム、ランタンが使われる代表的な製品と役割
レアアースは材料へ少量加えることで、磁力、耐熱性、発光、研磨や触媒の性能を引き出します。用途は代表例です。(経済産業省、JOGMECを基にDATA WORLD編集部作成

経済産業省の解説によると、ジスプロシウムやテルビウムなどの重希土類は、100度を超える環境で磁力を保つ必要がある電気自動車のモーター用磁石に加えられます。

モーターの磁石は目立ちません。ただ、電気を動きへ変える装置の中で働き続けています。自動車、産業用ロボット、風力発電機、エアコン。社会の電動化が進むほど、こうした材料を安定して入手する意味が大きくなります。

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鉱山から磁石まで。レアアース供給が中国へ集中した理由

レアアースが製品へ届くまでには、いくつもの工程があります。鉱石や泥を採る。混ざっている元素を一つずつ分け、純度を高める。金属や合金に加工し、最後に磁石などの部材へ仕上げます。

日本が中国から多く輸入してきた背景には、採掘量に加え、分離と精製、磁石製造までを大規模に担う産業基盤が中国へ集まっていることがあります。

レアアースが採掘、分離、精製、金属と合金、磁石、製品の順に加工される工程図
レアアースは採掘後、元素ごとの分離と精製、金属や合金への加工、磁石製造を経て製品へ届きます。(IEA、経済産業省を基にDATA WORLD編集部作成

経済産業省が現在の政策資料で使っている2021年の貿易統計では、日本のレアアース輸入先は中国が約60%、ベトナムが約16%でした。これは2021年の国別輸入額を基にした数字です。

世界全体を工程別に見ると、集中はさらに強くなります。国際エネルギー機関(IEA)の2026年分析によると、2024年の磁石向けレアアースで、中国は世界の採掘量の60%、精製量の91%、焼結永久磁石の生産量の94%を占めました。

工程中国が占める世界シェア
磁石向けレアアースの採掘60%
精製91%
焼結永久磁石の生産94%
2024年の磁石向けレアアースで中国が占める世界シェア。採掘60%、精製91%、焼結永久磁石94%
中国のシェアは、磁石向けレアアースの採掘で60%、精製で91%、焼結永久磁石の生産で94%です。(IEA(2026)を基にDATA WORLD編集部作成

採掘された鉱石が中国以外の国から来ても、その後の精製や磁石製造を担う設備、技術、人材は中国へ集中しています。中国には、鉱石を受け入れ、元素を分け、合金や磁石へ加工し、大きな需要へ届ける流れがそろっています。

これが、なぜ中国からの供給に頼ってきたのかという問いへの答えです。資源の採れる場所に加え、製品へ仕上げる一連の工程が中国に集まり、日本企業にとって安定した調達先になってきました。その結果、材料が製品へ近づくほど、ほかの供給先を選びにくい構造ができています。

そんな中、2025年4月、中国はイットリウム、ジスプロシウム、テルビウムなど7種の中重希土類に関係する品目を、許可が必要な輸出管理の対象へ追加しました。JETROの整理では、金属、合金、酸化物、化合物などが対象に含まれます。

そこで日本は、供給先と入手方法の両方を増やしています。

JOGMECは、日本への資源の安定供給を支援する公的機関です。JOGMECと日本の商社である双日は2023年、豪州のレアアース企業Lynasへ追加出資しました。その際、Lynasが豪州の鉱山から生産するジスプロシウムとテルビウムの最大65%を日本向けに供給する契約を結んでいます。

NEDOは、企業や大学の技術開発を支援する国の研究開発機関です。2023年度から2027年度までの事業として、鉱石、廃棄された電気自動車や家電、磁石の製造端材から、ジスプロシウムとテルビウムを分けて回収する技術を開発しています。目標は、回収した重レアアースを国内で事業として使えるところまで進めることです。

これまでの中国依存は、採掘から磁石製造までの工程が一つの国へ集中した結果でした。いま日本は、豪州からの調達、備蓄、国内でのリサイクル、使用量を減らす磁石、そして南鳥島の国産資源を組み合わせようとしています。複数の手段を重ねるほど、日本企業が持てる選択肢は増えていきます。

04

日本の海を調べるJAMSTECは、南鳥島で何を追ってきたのか

JAMSTECは、深海、海洋環境、地球内部などを船や探査機で調べる国立研究開発法人です。研究船、有人潜水調査船、無人探査機、海洋観測装置を運用し、海から得た試料や観測データを研究へつなげています。

南鳥島のレアアース調査は、東京大学などの研究者、内閣府のSIP海洋、国の研究機関、民間企業が共同で進めています。それぞれが地質調査、装置開発、環境評価、分離と精製などを担当します。JAMSTECは研究船と深海調査の技術を持つ中核機関として参加しています。

このプロジェクトが追ってきたのは、産業化へ進むための五つの問いです。

  1. レアアース泥は、どこにあるのか

  2. どれくらいの量があるのか

  3. 深海から船まで運べるのか

  4. どのレアアースが含まれているのか

  5. 環境への影響と費用を考えて、採鉱を続けられるのか

JAMSTECと研究チームが集めてきた五つのデータ。場所、量、採鉱、成分、環境と費用
場所、量、採鉱、成分、環境と費用。五つのデータをつなげることで、産業化の可能性を評価できます。(JAMSTEC公表資料を基にDATA WORLD編集部作成

この五つは順番につながっています。場所が分かると資源量を計算できる。量が見えると採り方を試せる。泥を回収できると成分を測れる。最後に、環境への影響と費用を確かめて、産業として続けられるかを判断する。次の章では、13年間の調査でそれぞれの問いにどこまで答えが出たのかを整理します。

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JAMSTECと研究チームが13年かけて集めた5層のデータ

南鳥島のレアアース調査は、2013年に海底の一点から泥を採ったところから始まりました。その後、資源の広がりを地図にし、量を推計し、深海から引き上げ、成分と周囲への影響を測るところまで進んでいます。

2013年の高濃度レアアース泥発見から、2018年の資源量推計、2022年と2026年の揚泥試験、2027年の試験計画、2028年以降の産業化検討までの年表
発見から13年。調査はレアアース泥の存在確認から、資源量の推計、採鉱と産業化の評価へ進んできました。(JAMSTEC、Takaya et al.(2018)を基にDATA WORLD編集部作成

1. 海底下3メートルで見つかった、高濃度の泥

2013年1月、深海調査研究船「かいれい」は、南鳥島周辺の水深5,600〜5,800メートルで「コア試料」を採取しました。筒状の装置を海底へ差し込み、泥を縦長の柱のような形で抜き取ります。どの深さに、どんな泥の層があるのかを調べる方法です。

JAMSTECと東京大学の発表によると、PC05と名付けた地点では、海底下約3メートルの泥から総レアアース濃度6,500ppm超を確認しました。

ppmは、全体の中に目的の成分がどれくらい含まれるかを示す単位です。6,500ppmは0.65%。泥1トンに置き換えると、レアアース全体が約6.5キログラム含まれる濃度です。JAMSTECの2026年解説では、タヒチ沖のレアアース泥の4〜6倍、ハワイ沖の10倍に当たる高濃度と説明されています。数字だけ見ると小さく感じますが、ほかの海域と比べると突出していたのです。南鳥島の海底に、ここまで濃く集まった泥がある。かなり印象的な発見ですよね。

一点で高濃度の泥が見つかっても、周囲へどこまで続いているかは分かりません。その後の調査では、音波を使って海底下の層を調べ、複数の場所からコア試料を採取しました。JAMSTECの2025年解説は、泥の層の深さと厚さが場所によって変わることを示しています。

点で見つけた泥を、海底下に広がる層として捉える。この地図が、次の資源量計算の土台になりました。

2. 1,600万トン超へ広がった資源の可能性

2018年、東京大学やJAMSTECなどの研究チームは、南鳥島EEZ南部の約2,500平方キロメートルを対象に、レアアース資源量を推計した査読論文を発表しました。

海底から海底下10メートルまでの泥を計算すると、レアアース酸化物換算で1,600万トン超と推計されました。

この数字が意味するのは、レアアースが一つの採取地点に集まっていたという発見から、広い海域に大きな資源が分布する可能性へ進んだことです。論文は、当時の世界需要と比べて、イットリウムで約780年分、テルビウムで約420年分、ジスプロシウムで約730年分に相当すると試算しました。この試算は資源全体のポテンシャルを示し、実際に採掘できる量や採算性は次の評価対象です。日本の海底に眠る資源の規模が、数字として輪郭を持った瞬間でした。

2018年の研究で使われた南鳥島沖の25地点の採取場所と、資源量を推計した約2,500平方キロメートルの対象海域
研究チームは南鳥島EEZ南部の25地点で泥を採取し、約2,500平方キロメートルを対象に資源量を推計しました。(Takaya et al.(2018), CC BY 4.0。日本語見出しを追加
海底面から海底下10メートルまでを1メートルごとに分けたレアアース濃度分布図
海底面から10メートル下までを1メートルごとに分け、平均濃度を地図化した研究図です。場所と深さによって濃度が変わる様子が分かります。(Takaya et al.(2018), CC BY 4.0。日本語見出しを追加

3. 水深2,470メートルの試験から、南鳥島5,569メートルへ

場所と量が分かっても、泥を船まで運ぶ方法がなければ資源として使えません。次に必要になったのが、深海で装置を動かし、泥を連続して引き上げられるかというデータです。

2022年、開発チームは茨城県沖の水深2,470メートルで、海底堆積物を船へ上げる試験に成功しました。このとき使った装置を南鳥島の深さに対応させ、2026年の試験では5,569メートル分の揚泥管を接続しています。

2022年の水深2,470メートルの試験、富士山の高さ3,776メートル、2026年の水深5,569メートルを同じ縮尺で比較した図
2026年の水深5,569メートルは、富士山の高さ3,776メートルを同じ縮尺で置いても、さらに約1,800メートル深い位置です。(JAMSTEC、国土地理院を基にDATA WORLD編集部作成

2026年は3日間にわたり、3カ所のレアアース層から約50トンの泥を回収しました。ここで得られたのは、回収量に加え、装置を下ろす日数、荒天時の運用、連続稼働などのデータです。海底で装置が動くかという実験から、現場で一連の作業を回せるかという試験へ進みました。5,000メートルを超える深海から、泥が連続して船へ届く。研究が一段先へ進んだことを実感する結果です。

4. 引き上げた泥に含まれていたレアアース

泥を引き上げた後は、その中にどのレアアースが含まれているかを調べます。元素の種類によって用途と価値が変わるためです。

2026年に回収した泥では、検出されたレアアース総量の約54%を中重レアアースが占めていました。イットリウム、ガドリニウム、ジスプロシウムなどです。軽レアアースでは、磁石に使われるネオジムも確認されました。

この分析で、中重レアアースを多く含むことが確認できました。泥全体のレアアース濃度と、製品材料としてどこまで回収できるかは、産業化を判断する次のデータになります。検出されたレアアースの中で、希少価値の高い元素が半分を超えていた。南鳥島の泥の中身へ、期待が高まる結果です。

5. 採鉱を続けるために、海と費用を測る

資源があり、採る方法が動いても、周囲の環境へ大きな負荷が出たり、運搬や精製に費用がかかりすぎたりすれば、採鉱を続けられません。五つ目のデータは、長く続けられる事業になるかを判断するためのものです。

2026年の試験では、海底に設置型の無人探査機、環境DNAの自動採取装置、水中マイクを置きました。濁りがどこまで広がるかを連続して測り、カメラで魚や海底の生物を記録しています。船上では海水と回収泥を調べました。どんな生物がいるか、採鉱中に周囲がどう変化したか、鉱物由来の汚染が起きたかを、複数のデータで確かめるためです。

JAMSTECは、船上で得た分析結果から、今回の採鉱による鉱物由来の環境汚染リスクは低いと判断しています。観測データと試料の詳しい分析は続いています。長期間、広い範囲で採鉱した場合の影響は、今後の調査で確かめます。

採鉱試験の前、試験中、試験後に海底環境を観測し、回収量や運用費などの事業性も確認する流れ
もとの海底を記録し、採鉱中の変化を測り、試験後に影響が残るかを追跡します。回収量、運用費、処理費、回収率、環境対策費も同時に確認します。(JAMSTEC公表資料を基にDATA WORLD編集部作成

事業性は、採鉱した泥を製品材料へ届けるまでの流れで測ります。次の本格試験は2027年2月から約1カ月の予定です。海底から上げた泥を南鳥島へ運び、島で水分を減らし、本土へ輸送します。その後、必要な元素を分け、純度を高める工程まで試します。

2028年3月までに、経済性を含む産業化の総合評価が予定されています。場所、量、採り方、中身、環境と費用。五つのデータがつながったとき、南鳥島のレアアースを産業として続けられるかが見えてきます。資源への期待と、海を守りながら続ける条件を同じ調査で確かめる。ここまで積み上げて初めて、日本の資源としての可能性がようやく形になりそうです。

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南鳥島のレアアースは、日本にどんな可能性をひらくのか

南鳥島のレアアースが国産供給源になると、日本には自分たちの海から資源を得るという新しい選択肢が加わります。

企業は価格や供給の安定性を見ながら調達先を選び、輸出手続きが遅れたときは別の供給源へ切り替えられます。緊急時の備蓄、使用済み磁石からの回収、材料の使用量を減らす技術もあります。そこへ国産資源が加わることで、一つの国の判断で工場が止まるリスクを小さくできるのです。

そして、選択肢と一緒に広がるのが、日本の技術を生かせる場所です。

2026年の試験では、船を正確な位置に保ち、採鉱機と揚泥管を海底へ下ろし、5,000メートルを超える管で泥を船まで運びました。同時に、センサーや水中マイクで海の変化を測り、採鉱前後のデータを比べています。日本が持つ船舶運用、深海機器、センサー、環境調査、データ解析の技術が、すでに一つの現場でつながり始めています。

2027年の本格試験では、海底から上げた泥を南鳥島へ運び、島で水分を減らし、本土で元素を分離して純度を高めるところまで試す計画です。この流れがつながれば、自国の海で採り、国内で製品材料へ仕上げ、メーカーへ届ける。そんな供給網が現実の選択肢に入ってきます。

資源を採る事業が動けば、それを支える船舶、ロボット、水中通信、素材、環境調査の仕事も広がる可能性があります。海底の泥から、新しい技術と産業が育っていく可能性がある。ここが、このニュースの面白さです。

日本が資源大国になれるか。その答えを、1,600万トンという数字だけから出すことはできません。資源量、生産速度、精製後の回収量、費用、環境への影響を測り、長く続けられる仕組みを作れるかで決まります。

日本はすでに、海底の泥を少し採って調べる段階から、水深5,569メートルへ装置を下ろし、約50トンを船まで運ぶ段階へ進みました。

私たちが何気なく暮らしている日本の島々。その周りには、まだ測りきれていない深い海が広がっています。

海底のどこに資源があり、どれくらい存在し、どうすれば環境への影響を抑えて使えるのか。調べるほど、日本が持てる選択肢は具体的になります。

南鳥島のレアアースは、日本が自分たちの海を知り、そのデータと技術から新しい産業をつくる入口になるかもしれません。

2028年の総合評価の先に、自分たちの海で見つけた資源を、自分たちの技術で製品材料へ変える未来がある。
そう考えると、ちょっとゾクゾクしてきませんか?

#BUSINESS#レアアース#南鳥島#海底資源#JAMSTEC#経済安全保障