BUSINESS── ARTICLE 003── ──更新 2026.08.10── 9 MIN READ

日本の街、もう306地域が立体に? 3D都市モデル「PLATEAU」の現在地

国土交通省のPLATEAUでは、2026年5月時点で306地域の3D都市モデルが公開されています。整備数だけでは分からないデータの細かさ、使い道、更新の課題から、日本の都市デジタルツインの現在地を読み解きます。

日本の市街地が色分けされた3D都市データへ切り替わる様子

自治体が防災計画を見直す。駅前の再開発を考える。新しい道路や公共施設をどこに置くか検討する。こうした場面では、さまざまな地図やデータが使われます。建物や道路の地図、土地の使い方を定めた図、災害の危険を示す図。人口や交通量は、また別の表に入っています。

必要な情報はすでにたくさんあるのに、作った組織も形式も違う。再開発や防災を検討するたびに資料を集め、同じ場所を指しているか確かめ、関係者へ伝わる図に直す必要がありました。平面の地図だけでは、建物の高さや水の深さ、日当たりの違いも捉えにくいままです。

この都市情報を、コンピューター上で重ねて扱える共通の「街の模型」にできないか。

そのために国土交通省が2020年度に始めたのが「Project PLATEAU(プロジェクト・プラトー)」です。自治体が持つ都市計画の地図を土台に、航空測量で得た高さや建物の用途などを加え、現実の都市をデータとして立体的に組み立てます。さらに、完成した3D都市モデルを誰でも使えるデータとして公開するところまでを一つの事業にしました。最初の年度には全国56都市が整備され、44件の活用方法が検証されています

それから約5年。2026年5月11日時点で、PLATEAUの公式サイトには306地域のオープンデータが掲載されています。

ただし、日本中の建物が同じ細かさで再現され、常に最新の状態になったわけではありません。整備された範囲も、建物の細かさも、更新された時期も地域によって違います。

この記事では、306という数字の中身と、実際に使える情報、すでに始まっている防災や都市計画での活用、今後の課題を整理します。日本の都市3D化は、街の模型を増やす段階から、共通のデータを仕事で使い続ける段階へ進み始めています。

PLATEAU VIEWで日本の都市を高さなどの情報に応じて色分けして表示した画面

PLATEAU VIEWでは、3D都市モデルに情報を重ね、都市を立体的に分析できます。出典:国土交通省 PLATEAU VIEW App

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PLATEAUは、形と意味を持つ都市データ

PLATEAUの3D都市モデルには、建物、道路、土地利用、都市計画、災害リスクなどが収められます。データはCityGMLという国際規格に基づいています。

国土交通省の説明では、建物や道路が一つずつ区別され、形に加えて用途や築年数、行政計画などの情報を持てることが特徴とされています。

普通の3D映像が街の「模型」だとすれば、PLATEAUは建物ごとに情報欄が付いた模型に近いでしょう。

データ重ねる情報の例検討できること
建物の形・高さ浸水想定、避難所水害時の危険や避難経路
屋根の形日射量太陽光発電の設置可能性
建物の用途・面積人口統計地域ごとの居住人口の推定
道路・建物人流データ混雑や避難行動のシミュレーション
都市計画の区域公共交通、施設まちの集約度や生活のしやすさ

しかも、公開データは商用利用を含めて無料で利用できます。自治体だけでなく、企業、大学、個人の開発者も同じ土台からサービスを作れます。都市ごとに一から地図を作らず、分析や画面、住民向けの機能へ力を使えるわけです。

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306地域という数字が示すもの

306というのは、2026年5月11日に公式のオープンデータ一覧へ掲載されていた「地域」の数です。全国1,741市区町村の306自治体を完全に再現した、という意味ではありません。

PLATEAUは、原則として自治体の希望をもとに国土交通省が支援して整備します。対象範囲は自治体全域の場合もあれば、都市計画区域や中心部などに限られる場合もあります。同じ自治体でも、年度の違うデータや一部区域の詳しいモデルが公開されることがあります。

数字を見るときの軸確認したいこと
地域数どの自治体・地域で公開されているか
面積自治体全域か、一部区域か
詳細度箱形か、屋根や窓まで表現しているか
情報の種類建物以外に道路、災害、都市計画などがあるか
整備年度現在の街とどの程度ずれているか

国土交通省は2027年度までに約500都市へ拡大する目標を示しています。地域数は今後も増える見込みです。ただし、普及を測るなら「公開された都市の数」と「継続して使われている業務の数」を分けて見る必要があります。

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建物は、箱形から窓の位置まで細かさが違う

3D都市モデルの細かさは「LOD(Level of Detail)」で表します。建物の場合、数字が大きいほど形状が詳しくなります。

  • LOD1は、建物の外周を高さ方向へ伸ばした箱形です。

  • LOD2は、屋根や外壁の形を分けて表します。

  • LOD3は、窓やドアなど外側の細部まで表現します。

  • LOD4は、部屋など建物の内部も扱います。

LOD1の箱形からLOD4の建物内部まで、3D都市モデルの詳細度が段階的に上がる比較図

LOD1は建物と高さ、LOD2は屋根、LOD3は窓やドア、LOD4は建物内部まで表します。出典:国土交通省 PLATEAU「3D都市モデルの特徴と活用法」

すべての建物がLOD3やLOD4で作られているわけではありません。広い地域を分析するなら、軽くて扱いやすいLOD1が役立ちます。日射や風を詳しく計算する場面では、屋根の形を持つLOD2以上が欲しくなる。避難経路や屋内案内では、さらに細かな情報が必要です。

つまり「細かいほど優れている」とも限りません。目的に必要な範囲と精度を選ぶことが、整備費用やデータの重さを抑えることにつながります。

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防災と都市計画で、実際の判断に近づく

PLATEAUの公式サイトには、実験だけで終わらせず、自治体の仕事へつなげようとする事例が並んでいます。

栃木県宇都宮市で検証された都市構造評価ツールは、建物モデルへ人口統計を結び付け、居住を促す区域の人口密度や、公共交通が届く人口の割合などを算出します。紙や表計算から手作業で集めていた情報を、共通形式のデータから計算しやすくする試みです。

宇都宮市の3D都市モデルを建物用途で色分けし、用途別の建物数をグラフで表示した都市構造評価画面

建物用途を色分けし、都市構造の変化を地図とグラフで確認できます。出典:国土交通省 PLATEAU「3D都市モデルを活用した都市構造評価ツールの開発」

佐賀県佐賀市の地区防災計画作成支援ツールでは、住民が3D地図上で自宅の災害リスクを確かめ、避難経路や備蓄場所などを記録できる仕組みを開発しました。検証では計画作成の効率化に有効だった一方、スマートフォン対応や高齢者にも使いやすい画面づくりが課題として残りました。

佐賀市の個別避難計画作成画面で、自宅周辺の洪水や土砂災害の危険を3D地図上に表示した様子

自宅を選ぶと、周辺の洪水や土砂災害の危険を確認できます。出典:国土交通省 PLATEAU「地区防災計画作成支援ツールの開発」(掲載画像を1600×900に調整)

3D表示が価値を生むのは、建物をきれいに見せた瞬間ではありません。人口や災害リスクを重ね、選択肢を比べ、関係者が判断できるところまでつながったときです。

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更新し続けなければ、都市の「現在」からずれていく

街では建物が建ち、道路が変わり、施設が閉じます。3D都市モデルも一度作れば完成、とはいきません。

国土交通省のFAQによると、データは自治体が定期的に取得する航空写真などをもとに作られ、一般的な更新間隔はおおむね1〜5年です。そのため、PLATEAU VIEWに最新の建物が反映されていない場合もあります。

更新には、変化した場所を見つけ、元データを集め、再整備し、品質を確かめる作業が必要です。PLATEAUでは衛星データなどから変化の大きい場所を探す更新優先度マップも検証されています。全面的に作り直す前に、更新すべき場所を絞る発想です。

もう一つの課題は、使う側です。CityGMLを業務ソフトで扱える形へ変換し、人口や人流など別のデータと位置を合わせ、結果が現実と合うか確かめる必要があります。無料で公開されていることと、導入・運用が無料で済むことは同じではないんですよね。

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日本の都市3D化は、企業が判断に使える基盤へ

日本の都市はどこまで3D化されたのか。

2026年5月時点では、306地域で3D都市モデルのオープンデータを利用できます。2021年度の56都市から見れば、共通の都市データ基盤はかなり速いペースで広がりました。

一方、整備範囲、細かさ、収録情報、年度は地域ごとに異なります。全国が最新の状態で、窓や室内まで再現されたわけではありません。

現在地をまとめると、PLATEAUは「立体的な都市データがあると何ができるか」を試す段階から、「そのデータを日々の判断へどう組み込むか」を考える段階へ進んでいます。

企業にとって大きいのは、都市の基礎データをすべて自社で作らなくても、公開済みの地域なら検証を始められることです。たとえば、不動産や小売なら出店候補地の建物用途、交通、浸水リスクを重ねる。建設やエネルギーなら屋根の形や日射量から設備の候補を絞る。イベントや観光なら、道路、広場、人の流れを組み合わせて混雑や避難を検討できます。

始め方は、次の三段階に分けると現実的です。

  1. 対象地域に必要なPLATEAUデータがあるか、整備年度と細かさを確認する

  2. 解決したい課題を一つに絞り、自社データや公開データを重ねて小さく検証する

  3. 判断時間が短くなったか、見落としが減ったかを測り、更新と運用を続ける価値を見極める

今後、公開地域が約500都市へ広がり、更新を効率化する仕組みも整えば、複数地域を同じ方法で比べやすくなります。店舗網や物流拠点の配置、災害に強い事業計画、自治体と企業が共同で進めるまちづくりなど、利用できる場面はさらに増えるでしょう。

日本の都市3D化は、全国を精密なCGにする競争ではありません。都市について別々に保管されてきた情報を、同じ場所のデータとして結び直す取り組みです。その土台が306地域まで広がった今、次に期待したいのは、3Dモデルの見栄えではなく、行政や企業の判断が速くなり、災害への備えや暮らしの選択が少しずつ良くなることでしょう。

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