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AIはもう"シゴデキ"なのか? 44職種の実務テストで見えた実力と限界

AIは法律文書や設計資料、表計算、プレゼン資料など、現実の仕事をどこまでこなせるのか。44職種の実務テスト「GDPval」から、任せられる仕事とまだ人が担う部分を探ります。

多数の腕で表計算、報告書、プレゼン資料、メールなどの仕事を同時にこなす人物
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AIの評価が、試験問題から仕事の成果物へ移ってきた

AIの評価を追っていると、ここ数年で「何を測るか」が変わってきたと感じます。

以前は、試験問題の正答率やプログラミングの成績が中心でした。最近は、上司に見せられる資料、計算式の入った表、顧客へ出せる提案書、現場で使う設計案まで評価対象が広がっています。

私たちが仕事で知りたいのも、この部分です。AIは、実際の仕事をどこまで進められるのか。

職場では、最初の成果物を出したあとに確認と修正が続きます。

「ごめん、前提が変わった」「この数字、ほんと?」「役員向けに3枚でまとめ直して」みたいな修正が飛んできます。
(仕事ってだいたい一発では終わらないんですよね…w)

そこで、AIとデータを仕事にしている私たちが気になったのが、OpenAIの「GDPval」です。

44職種の仕事に近い成果物をAIに作らせ、人間の専門家と比べています。

GDPvalが対象にした9産業、44職種、1,320課題、課題作成者の平均経験14年以上と、不動産、政府、製造、医療、金融、小売、卸売、情報、専門・科学・技術サービスに含まれる職種例

9産業には、不動産・賃貸、政府、製造、専門・科学・技術サービス、医療・社会支援、金融・保険、小売、卸売、情報が含まれます。職種例は44職種の一部です。出典: OpenAI「Measuring the performance of our models on real-world tasks」

先に結論を言うと、AIは「ちゃんと整理された仕事」なら、かなりできるようになっています。専門家が見ても、人間と同じくらい良いと評価される成果物が出てきました。

じゃぁもうAIに仕事を丸投げして大丈夫なのか?

AIができるようになった仕事と、このテストでは測れていない仕事。その境目を一緒に見ていきましょう。

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GDPvalは44職種の納品物を比べる

GDPvalは、OpenAIが作った実務テストです。GDPは国内総生産を指します。米国のGDPへの影響が大きい9産業から、知識を使う割合が高い44職種を選びました。

対象になったのは、ソフトウェア開発者、弁護士、会計士、看護師、不動産仲介者、機械技術者、顧客対応担当者など。かなり幅があります。

OpenAIの説明によると、用意された課題は全部で1,320件。そのうち220件が、外部からも確認できる公開用の課題です。課題を作ったのは、それぞれの仕事を平均14年以上経験している専門家でした。

作るものには、次のような成果物があります。

  • 法律文書

  • 看護計画

  • 顧客対応の回答

  • 表計算ファイル

  • プレゼン資料

  • 工学設計の図やPDF

知識の量に加えて、相手へ渡せる形まで仕上げる力が試されます。

これまでのAIテストとの違いを、ざっくり並べるとこうなります。

従来型のテストGDPval
問題文に答える仕事で使う成果物を作る
正解が一つに決まりやすい見やすさや使いやすさも見る
主に文章や選択肢文書、スライド、表、図など
自動で採点しやすい同じ職種の専門家が比べる

ここが、これまでのAIテストと違うところです。AIの答えが正しいだけでは足りません。内容を読みやすく並べ、目的に合う形で仕上げるところまで評価されています。

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専門家 vs AI、どちらが作ったかを隠して比べてみる

では、どうやって評価したのでしょうか。

同じ職種の専門家が、AIと人間の成果物を並べて比較しました。その際、どちらをAIが作ったかは伝えられていません。

名前を伏せて、純粋に納品物だけを見る。

そのうえで、AIの成果物が人間より「良い」「同じくらい」「劣る」のどれかを判断しました。

2025年に公開された220課題では、Claude Opus 4.1の成果物が、人間と同等以上と評価された割合は47.6%でした。なんと約半分。
OpenAIのGPT-5はそれに続き、専門知識の正確さで強みを示したと報告されています。

OpenAIが作ったテストで最も高い成績を出したのは、AnthropicのClaudeでした。資料の見栄えやスライドのレイアウトが、特に高く評価されたそうです。

47.6%は、選ばれた220件の課題で、AIの成果物が人間と同じか、それ以上と評価された割合です。この数字が示す範囲は、成果物を一対一で比べた結果までです。

また、これは2025年時点のモデルを比べた結果です。現在のAIランキングとして見る数字でもありません。

整理された一部の仕事で、人間に見劣りしない成果物が出てきた。この結果から確認できるのは、そこまでです。

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100倍速くて、費用は100分の1。

さらに驚いたのが、時間と費用です。

OpenAIは、AIがGDPvalの課題を約100倍速く、約100分の1の費用で処理したと報告しています。

GDPvalで報告された三つの数字。Claude Opus 4.1の成果物が人間と同等以上と評価された割合は47.6%、AIの回答生成は人間の作業時間と比べて約100倍速く、専門家への報酬とAI利用料金の比較では約100分の1。ただし確認、修正、導入、運用の時間や費用は含まない。

出典: OpenAI「Measuring the performance of our models on real-world tasks」。速度と費用は、AIの回答生成にかかった時間と利用料金を中心にした比較です。

100倍・・・1時間の仕事が、単純計算なら36秒。数字だけを見ると、かなり衝撃があります。

この計算に入っているのは、主にAIが回答を生成した時間と、AIを動かす料金です。

ですが、AIへ渡す資料を集める時間や、頼文を作る時間、出てきた内容が正しいか確認する時間、間違えたときに対応する人の時間など、これらは含まれていません。
OpenAI自身も、実際の職場で必要になる人の監督、修正、導入作業までは捉えていないと説明しています。

AIが10分で資料を作っても、その間違い探しに3時間かかったら、「仕事が速くなった」とは言いにくいですよね。

Axiosの取材でも、OpenAIのチーフエコノミスト、ロニー・チャタジ氏は、この結果がすぐに人間を職場から追い出すことを意味しないと話しています。
速さと安さは魅力です。でも、実際に見るべきなのは、確認まで含めた総作業時間というわけですね。

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現実の仕事には、依頼文に書かれていない作業がある

GDPvalは、これまでのAIテストより現実の仕事に近い設計です。同時に、職場の一部を切り出したテストでもあります。

現在のGDPvalは、一度の指示に対して、一度の成果物を出す方式です。AIは必要な資料と、かなり丁寧に整理された依頼を受け取ります。

依頼者へ質問する。途中で見せて反応を聞く。方向が違ったら作り直す。関係者の意見が割れたら調整する。

こうしたやりとりは評価されていません。

でも実際の仕事って、むしろこちらの方が大変だったりします。

「売上を伸ばしたい」と言われたものの、何を調べればいいか分からない。営業部と経理部で見ている数字が違う。途中で偉い人のひと言により、資料の方向が180度変わる。(あまり起きてほしくないんですけど)

TIMEが紹介した別の実務テストでも、AIに仕事をさせるための前提条件が長くなり、指示を書く方が自分で作業するより面倒になる場合がある、という声が紹介されています。

頼まれたものを作る力と、何を作るべきか決める力。GDPvalが主に測っているのは前者です。

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職場の実験では、速くなる仕事と成績が落ちる仕事が分かれた

GDPvalは完成した成果物を比べています。実際の職場でAIを使った研究も見てみましょう。

米国の顧客対応担当者5,172人を調べた「Generative AI at Work」では、AIが顧客とのチャットを読み、返答案や社内資料へのリンクをリアルタイムで提示しました。担当者は提案を無視しても、書き換えても構いません。

AIを使った担当者は、1時間あたりに解決できる相談件数が平均15%増えました。内訳を見ると、1件の相談にかかる時間が短くなり、同時に扱えるチャット数が増え、解決率も少し上がっています。経験の浅い担当者ほど効果が大きく、熟練者が持つ対応パターンをAI経由で使えた可能性が示されています。

文章作成を扱ったNoyとZhangの実験には、マーケティング、人事、コンサルティング、データ分析などの仕事を持つ453人が参加しました。

任された内容も具体的です。人事担当者と管理職は慎重な言い回しが必要なメール、マーケターは架空商品のプレスリリース、助成金申請の担当者は申請書、コンサルタントは短いレポート、データ分析担当者は分析計画を作りました。ChatGPTを使った人は、作業時間が平均40%短くなり、成果物の品質は18%上がっています。

一方、コンサルタント758人が参加した「Navigating the Jagged Technological Frontier」では、課題の種類によって結果が逆転しました。

AIが得意だったのは、新しい靴のアイデアを10個以上考える、靴市場を利用者別に分ける、商品のプレスリリースを書く、社員向けのメッセージを作る、といった商品企画と文章作成です。AIを使った参加者は12.2%多くの課題を終え、作業時間は25.1%短く、成果物の品質も40%以上高く評価されました。

顧客対応5,172人、文章作成453人、コンサルタント758人を対象にした三つの研究で、参加者が取り組んだ課題、AIによる支援、処理件数、時間、品質の変化を整理した比較図

三つの研究は参加者、課題、測定指標が異なります。数字の大小で研究同士を比べる図ではなく、それぞれの実験で確認された変化を整理しています。

成績が落ちたのは、架空企業のブランド戦略を考える課題です。参加者はインタビュー記録と財務データを突き合わせ、成長の可能性が高いブランドをCEOへ提案しました。数字だけを素直に読むと、もっともらしい誤答へ誘導される仕掛けがありました。

AIを使わないグループの正答率は84.5%。AIを使った2グループは60%と70.6%でした。AIの提案が説得力のある誤答だったため、人間もそこへ引っ張られたと考えられます。

同じ人が同じAIを使っても、課題によってプラスとマイナスが入れ替わってしまうんですね。

コンサルタント実験でAIが得意だった商品企画や文章作成の課題と、成績が落ちたブランド戦略課題を比較した図。ブランド戦略課題の正答率はAIなしが84.5%、AI利用グループが60.0%と70.6%。

この「得意分野の境界がギザギザしている」という見方は、会社でAIを試すときにも役立ちます。職種名だけを見ても、効果は読めません。作業を一つずつ見ていく必要があります。

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長い工程を進める力にも、分野ごとの差がある

AIが一つの成果物を作る力に加えて、長い工程を進める力も測られています。

研究非営利団体のMETRは、人間なら何時間かかる課題を、AIが一定の確率で最後まで終えられるか調べています。

METRの説明では、AIが50%の確率で成功できる課題の長さを「50%時間地平」と呼びます。

言葉は少し難しいですが、見ていること自体はシンプルです。

いくつもの工程が続く仕事を、途中で投げ出さずに進められるかを測ります。

では、AIが8時間相当の課題をこなせたら、人間の1日分の仕事を任せられるのでしょうか。

METRは、この数字を職業全体へ当てはめないよう説明しています。

評価対象は主にソフトウェア開発、機械学習、サイバーセキュリティ。しかも、初めて参加する外部スタッフでも取り組めるよう、課題が整理されています。

METRが2026年1月にまとめた限界には、分野ごとの違いも示されています。ソフトウェア開発や研究課題を中心に測った時間と比べ、画面を見ながらマウスやキーボードを操作する課題の時間は40分の1から100分の1程度でした。数学課題ではソフトウェア分野と似た伸び方が見られています。

同じ「知的な仕事」でも、コードを書く、数式を解く、画面上の小さな表示を見つけて操作する、では難しさが大きく変わります。METRの評価用課題は、初めて参加する外部スタッフでも取り組めるよう、目的と採点方法が整理されています。社内の暗黙知や関係者との調整を含む仕事は、さらに別の条件として考える必要があります。

AIが長く仕事を続けられるようになったのは確かです。

でも、「8時間働けるAI」という一つの数字だけで、すべての職場を語ることはできないんですね。

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会社で試すなら、営業資料1本から

では、私たちはAIへどんな仕事を任せればよいのでしょうか。

「営業をAI化しよう」「経理をAIに置き換えよう」まで広げると、効果を測りにくくなります。

まずは、成果物を一つ選ぶ方が試しやすそうです。

営業会議で使う比較資料を1本。請求書の抜けを確認する作業。複数の調査資料を並べた表。

このくらいまで小さくすると、AIが本当に役立ったかを比べられます。

AIへ頼みやすい仕事まだ人が深く関わりたい仕事
会議メモから論点を整理する人事評価を最終決定する
定型資料の初稿を作る法的責任を伴う判断を確定する
複数資料の比較表を作る曖昧な依頼から重要方針を決める
ルールに沿って抜けを探す利害が対立する相手を調整する
選択肢を複数出す結果に責任を持つ
  1. 何ができたら成功なのか

  2. 正確さ、時間、費用をどう比べるのか

  3. どんな間違いが起こり得るのか

  4. 最後に誰が確認するのか

AIの点数が高いかどうかより、自分たちの仕事で総作業時間が減ったか。

ここまで測って、ようやく自社にとって「使えるAI」なのかが分かります。

国際労働機関(ILO)も、生成AIの影響を職業単位より作業単位で見ています。2025年の推計では、世界の雇用の約4分の1が生成AIの影響を受け得る一方、多くの職業には人の関与が必要な作業が残るため、もっとも起こりやすい変化は「職業の消滅」より「仕事の組み替え」だとしています。

実際の利用データにも、その混ざり方が表れています。Anthropic Economic Indexは、Claudeの会話を職業別の作業へ対応づけて分析しています。2025年1月のデータでは、約36%の職業で、少なくとも4分の1の作業にClaudeが使われていました。利用先はソフトウェア開発や文章作成など、一部の作業へ集中しています。

仕事は、AIが得意な作業と、人が文脈を補う作業の組み合わせへ変わり始めています。

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AIは“仕事が速い新人”に近づいている

では、AIは現実の仕事をどこまでこなせるのか。

今回のGDPvalを見る限り、必要な資料と目的が整理された仕事なら、専門家に迫る成果物を出す場合があります。

法律文書を作る。表をまとめる。スライドを整える。設計案をPDFにする

ここまでできるなら、もう「質問に答えるだけのチャットボット」とは言えません。

仕事の目的を決める。曖昧な依頼を整理する。途中で相談する。社内事情を読む。間違いに責任を持つ。

この部分は、GDPvalでは測れていません。

今のAIをたとえるなら、手がとても速い新人に近いのかもしれません。
指示が明確なら、驚くほど早く成果物を出してくれる。でも、前提が合っているか、会社としてその内容を出してよいかは、経験のある人が見る必要がある。

まずは一つの成果物をAIへ頼み、人間が作った場合と比べてみる。品質と確認時間を一緒に測ります。
そうすると、「自分の仕事のどこをAIと一緒に進められるか」が見えてきます。

私たちも、AIが作った資料を直す時間まで含めて、本当に仕事が楽になるのか試していきたいと思います。
「AI、もう普通に仕事できるじゃん」と言える場面は、確実に増えていますが、上司の確認なしで取引先へ送信するには、まだ怖さが残ります。
現時点では、そのくらいの距離感がちょうどよさそうです。

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参考文献・出典

#BUSINESS#AI#働き方#生産性#AI評価